テレビのネット同時配信は、儲からなくてもやるべきか

テレビ放送を、PCやスマホからも視聴できるようにする「ネット同時配信」。それを推進しようとしているのが、総務省とNHKで、難色を示しているのが民放各社である。

最近この問題に関して大きな動きがあったので、まとめてみようと思う。


同時配信に関しては、2015年11月から、総務省主催の「放送を巡る諸課題等に関する検討会」(諸課題検討会)で継続的に議論されてきた。主な参加者は、総務省、NHK、民放である。

総務省は、スマホの普及による若者のテレビ離れや、同時配信が世界的に進んでいることを受け、五輪までに実現しようとしている。既に世界では、イギリス,ドイツ,フランス,韓国,アメリカが同時配信を実現させている。

NHKも同じ危機感を抱いており、同時配信に乗り気だが、現状のままでは放送法に反するため実現できない。従って法改正に向けて動いている。そして「テレビを持っていないネット利用者からも受信料を徴収する」という方針を掲げたが、民放に反発を受けて撤回した。こういった混乱もあり、法改正の議論は難航している。

民放には法的な制約はないが、同時配信には否定的である。理由は明快で、ビジネスとして成立しないからである。ネットに配信することは、権利処理のコストが高く、インフラ費用も莫大で、地方局の困窮にも繋がるのだ。加えて、安定した収益基盤のあるNHKとの格差拡大を恐れている。

だがこの状況が、2017年12月の「諸課題検討会」で変化した。

民放に対し、公共メディアとしての役割と責任を問うような論調が強まったのである。座長の多賀谷一照氏が「現在のシステムのまま生き残るためにどうすべきかという議論をするべきではない」「限られた放送局がビジネスをしていた時代ではなくなっている」「現在の放送局のビジネスモデルは維持できなくなるだろう」「本来の公共的な放送という役割に、民放もNHKも戻っていくべきである」と発言し、民放キー局の幹部が返答に窮するという場面があった。

総務省が主催する別の会議体でも、「周波数有効活用」の議論が出ており、数の限られた電波を使用するテレビ局に対して、今まで以上に公共メディアとしての社会的な役割を問うような論調が強まっている。

公共性という観点で言えば、ネット同時配信は公共の利益に繋がるものだ。これまで、ビジネス的な観点から反対してきた民放も、立場を変える必要性が出てきたのかもしれない。今後も、諸課題検討会の動向を注視すべきである。



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